お互いの「普通」が違うって面白い 年の差友人と知る多様な価値観
年の差の友人と気づいた「当たり前」の違い
子供たちが独立し、夫婦二人の生活にも慣れてきた頃、ふと自分の周囲を見渡すと、話す相手がどうしても同世代の人に偏りがちになっていることに気づきました。新しい人間関係、特に若い世代の方々との交流に憧れはあったものの、「何を話せばいいのだろう」「価値観が違いすぎて話が合わないのでは」といった不安があり、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
そんな私が、ひょんなことから年の離れた友人、仮に「ゆいさん」(30代)と親しくするようになった体験談を通して、年齢を気にしない友情が可能であること、そして多様な関係性の形についてお話ししたいと思います。
ゆいさんとの出会いは、地域のボランティア活動でした。最初はお互いに遠慮がありましたが、一緒に作業をするうちに自然と会話が増え、いつしか個人的なやり取りをするようになっていきました。
「普通」だと思っていたことが、そうではないと気づいた瞬間
ゆいさんと親しくなって一番面白く、そして学びが多いと感じるのは、お互いが「普通」だと思っていることが、世代によって全く違う場合があるということです。
例えば、連絡手段についてです。私は友人との連絡手段といえば電話か、せいぜい簡単なメールという感覚でした。しかし、ゆいさんとのやり取りは、LINEが中心です。最初は、メッセージを送ってすぐに返信がないと、「何か怒らせてしまったかしら」「忙しいのかしら」と少し心配になりました。私の「普通」は、用件があればすぐに電話をするか、少なくともその日のうちに返信があることだったからです。
ある時、思い切ってゆいさんにそのことを話してみました。「LINEって、すぐに返信しなくても大丈夫なの?」と。すると、ゆいさんは笑って、「あ、すみません! 私は仕事中や移動中はなかなか見られないこともあるんです。でも、内容はじっくり読んで、きちんと返信したいと思っているので、少し時間がかかることがあるかもしれません」と教えてくれました。そして、「電話だと、相手の都合の良い時間か分からないので、LINEで送っておいてもらえた方が自分のタイミングで確認できて助かることが多いです」と付け加えてくれました。
この時、「そうか、若い世代の方は、相手の時間を奪わないように、非同期なコミュニケーションを好む場合が多いのかもしれない」と気づかされました。私の「すぐに反応があるのが当たり前」という感覚は、私の世代やこれまでの経験に基づく「普通」であって、それが普遍的な「普通」ではないのだと、改めて認識したのです。
また、お金に対する価値観にも違いを感じることがありました。私は若い頃から「無駄遣いはせずに貯金をするのが当然」という感覚で育ちましたが、ゆいさんは「経験にお金を使うことは大切」「好きなことには投資を惜しまない」といった考え方をすることもあるようです。例えば、少し高価な趣味の道具を迷いなく買ったり、自分にとって価値のあるセミナーに参加したりといった姿を見て、最初は少し驚きました。
しかし、話を聞いてみると、それは衝動買いなどではなく、彼女にとって明確な目的や価値があるからこその出費なのです。「これはスキルアップに繋がるから」「この経験は後で必ず役に立つから」といった、将来を見据えた、あるいは自己成長のための投資という側面が強いことを知りました。私の世代とはまた違った視点での金銭感覚があるのだと知り、これもまた新鮮な驚きでした。
違いを知り、受け入れることの豊かさ
このような「当たり前」の違いに気づくたび、最初は少し戸惑うこともあります。しかし、そこで「自分の考え方こそ正しい」と決めつけずに、「相手はなぜそう考えるのだろう?」と問いかけたり、率直に尋ねてみたりすることで、お互いの背景にある考え方や価値観が見えてきます。
ゆいさんも、私の「すぐに電話してしまう」「手紙を書くのが好き」といった習慣を面白がって聞いてくれます。「〇〇さん(私のこと)の話を聞いていると、私たちの親世代ってこうだったのかなって想像できて、面白いです」と言ってくれるのです。
お互いの「普通」を否定するのではなく、「そういう考え方もあるのね」「世代が違うとこんなにも違うのか」と、面白がり、受け入れる姿勢を持つこと。これが、年齢差のある友情を豊かに育む鍵だと感じています。
最初は理解できなかったり、少し戸惑ったりすることも、相手の視点を知ることで、「なるほど、そういうことか」と腑に落ちることが増えてきました。それは、自分の凝り固まった考え方を解きほぐし、物事を多角的に捉える柔軟性を私に与えてくれたように思います。
年齢を気にせず、心を開いて話してみませんか
年齢が違うから話が合わない、という不安は、多くの方が感じることかもしれません。しかし、今回お話ししたように、お互いの「当たり前」の違いを知ることは、決して壁になるだけではありません。むしろ、それを面白がり、尊重し合うことで、想像以上に豊かな学びや気づきを得ることができるのです。
もし、あなたが若い世代の方との交流に興味があるけれど、どうすれば良いか分からないと感じているなら、まずは身近なところで、少しだけ心を開いて話しかけてみるのはいかがでしょうか。共通の話題から始めて、もし「あれ?」と思うような価値観の違いに触れたとしても、それは発見の機会かもしれません。
年の差があるからこそ見えてくる新しい景色が、きっとあなたの日常に彩りを加えてくれるはずです。無理に若作りをする必要も、相手に合わせすぎる必要もありません。ありのままの自分で、お互いの「普通」を語り合ってみることから、素敵な年の差の友情が始まるかもしれません。
あなたが、年齢を気にしない、心温まる交流を見つけられることを願っております。