私の「当たり前」に若い友人が興味を持ってくれた話 年の差友情が深まった意外なきっかけ
日常の「当たり前」が、新しい出会いの扉を開く
子供たちが独立し、夫婦二人の生活にもすっかり慣れた頃、私の日々に少しだけ、ぽっかりとした時間が生まれました。新しいことを始めたい気持ちもあるけれど、若い世代との交流にはどこか遠慮があり、どう接して良いものか分からない。そんな風に感じていらっしゃる方も、いらっしゃるかもしれません。
年の差のある友人を作るには、特別なきっかけや場所が必要なのでは? そう思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、私たちの普段の生活、毎日続けている「当たり前」の中に、若い世代との心温まる交流のヒントが隠されていることがあるのです。
今回は、私のささやかな日常の習慣が、若い友人との絆を深める意外なきっかけとなった体験談をお話しさせていただきます。
地域の活動で見かけた、あの若い方
私が里奈さん(仮名)と初めて言葉を交わしたのは、近所の図書館で行われた小さなイベントでした。地域の歴史に関する講座だったのですが、参加者の中でひときわ若い彼女の姿が目に留まりました。何度か顔を合わせるうちに、会釈を交わすようになり、ある時、イベントが終わって駅まで一緒に歩く機会がありました。
最初は、何を話して良いものか戸惑いました。私は子育ての話や昔の仕事の話。里奈さんは今の会社の様子や流行りの話題。世代が違うと、共通の話題を見つけるのは難しいものだ、と感じていたのです。遠慮もあり、当たり障りのないお天気の話などで終わってしまうことがほとんどでした。
私の「当たり前」に、彼女が興味を示してくれた
そんなある日、駅までの道すがら、ふと自宅の庭の話になりました。「この時期になると、庭の梅の木が実をつけるのが楽しみで。今年もたくさん採れそうでね」と、特に深く考えるでもなく、日々の出来事の一つとして話したのです。
すると、里奈さんの目がぱっと輝きました。「え、梅ですか!すごいですね!自分で梅干しとか作るんですか?」と、身を乗り出すように聞いてくれたのです。
私にとっては、もう何十年も続けている、ごく当たり前の季節の仕事です。特別に話すようなことではないと思っていたので、里奈さんの強い興味に正直驚きました。
「ええ、まあ、毎年少しだけですけどね」と答えると、「へえ!私、梅干しって買うものだと思ってました!どうやって作るんですか?すごく難しそう!」と、質問が次々と飛んできました。
私の当たり前が、彼女にとっては全く未知の世界だった。そのことに気づかされた瞬間でした。
梅仕事が繋いだ、年の差の絆
その会話をきっかけに、里奈さんが私の家に梅干し作りを見に来てくれることになりました。初めての「先生役」に少し照れながらも、梅の選び方、アク抜き、塩漬け、土用干しと、一つ一つの工程を説明しました。里奈さんは、私の手元をじっと見つめ、熱心にメモを取りながら、「わあ、綺麗!」「本当に手間がかかるんですね!」と感心しきりでした。
一緒に梅を洗ったり、塩をまぶしたりしながら、自然と会話も弾みました。梅干し作りの話だけでなく、お互いの普段の生活のこと、仕事のこと、趣味のことなど、色々な話を聞くことができました。最初は遠慮していた私ですが、里奈さんの素直な好奇心と温かい人柄に触れ、次第に心を開くことができました。
里奈さんにとっては、梅干し作りという「新しい体験」。私にとっては、自分の長年の習慣が誰かに喜びを与えるという「新しい気づき」。お互いにとって、新鮮な驚きと発見に満ちた時間でした。
その夏、私が漬けた梅干しが美味しくできた頃、里奈さんがお礼にと手作りのお菓子を持ってきてくれました。「〇〇さんと一緒に作った梅干し、出来上がりが本当に楽しみです!」と言ってくれた言葉が、何より嬉しかったです。
日常の中に、新しい交流の種がある
この経験から、私は大切なことを学びました。それは、年齢差を気にして特別で難しいことばかり考える必要はない、ということです。私たちが普段何気なく行っている家事や趣味、地域での活動など、自分にとっては「当たり前」と思っていることの中にこそ、若い世代が興味を持ち、交流が生まれるきっかけがたくさんあるのかもしれません。
そして、相手の「当たり前」にも好奇心を持って耳を傾けること。それが、年の差を越えた関係性を築く上で、とても大切なことだと感じています。
里奈さんとの交流は、私の日々に新しい彩りを加えてくれました。彼女の持つ若々しい感性や、未知の世界への探求心に触れることは、私自身の視野を広げ、いくつになっても学びがあることを教えてくれます。
もし、あなたが新しい人間関係、特に若い世代との交流に興味があるけれど、一歩踏み出せないと感じているなら、まずは自分の身の回りにある「当たり前」に目を向けてみてください。あなたが長年培ってきた経験や知識、大切にしている習慣の中に、きっと素敵な出会いの種が隠されているはずです。
年齢を気にせず、心を開いて、あなたの日常を少しだけシェアしてみませんか。そこから、想像もしなかった温かい友情が始まるかもしれません。