クローゼットの前でため息… 若い友人が変えてくれた私の普段着
毎日、クローゼットの前で立ち尽くしていました
朝、服を選ぼうとクローゼットを開けるたびに、私はため息をついていました。かつて気に入っていた服は体型に合わなくなり、若い頃に流行ったデザインは今の自分にはどうもしっくりきません。お店に並んでいる服は、どれもこれも若い人向けのように見えて、何を選べば良いのか全く分からないのです。
「もう、年だから仕方ないわね」
そう自分に言い聞かせながら、結局いつも同じような無難な服ばかり選んでしまう日々でした。おしゃれを楽しむ気持ちはすっかり薄れ、外出するのも少し億劫になっていました。
きっかけは、カルチャーセンターの陶芸教室で
そんな私が、服選びが少しずつ楽しくなったのは、カルチャーセンターの陶芸教室で出会った若い友人のおかげです。彼女の名前は美咲さん。まだ20代後半で、いつも流行を取り入れつつも、どこか上品でおしゃれな着こなしをしていました。
最初はお互いに少し遠慮があったのですが、陶芸の話で意気投合するうち、自然と年齢差を気にせず話せるようになりました。休憩時間に、たまたま私が着ていた服について「そのブラウス、素敵ですね」と美咲さんが声をかけてくれたのです。
「まあ、ありがとう。でも、もう何年も前の服でね。最近は何を着ていいか分からなくて困っているのよ」
私の正直な悩みに、美咲さんは優しく耳を傾けてくれました。
押し付けない、寄り添うアドバイス
美咲さんは、今の流行りを一方的に教えるのではなく、私の悩みや好みを丁寧に聞いてくれました。
「体型が変わると、昔の服が似合わなくなってしまいますよね。私も、ちょっと太ったり痩せたりするだけで、似合うものが変わるのを感じます」
そう言って、まず私の気持ちに寄り添ってくれたことが、とても嬉しかったです。そして、無理に若い服を着るのではなく、大人世代だからこそ似合う服の選び方や着こなし方について、彼女自身の経験やお店で見たことなどを話してくれました。
例えば、
- 首元をきれいに見せるVネックやUネックの開き具合
- 体のラインを拾いすぎない、程よいゆとりのあるシルエット
- 顔色を明るく見せるきれいな色の取り入れ方(トップスやストールなど)
- プチプラのお店でも、素材感やディテールにこだわって選ぶポイント
といった、具体的なアドバイスでした。「〇〇さんの優しい雰囲気に、こんな色のトップス、きっと似合うと思いますよ」「この形なら、気になるお腹周りもカバーできますし、楽に過ごせますよ」と、私を主語にして話してくれるのが印象的でした。
小さな一歩が、自信につながりました
美咲さんのアドバイスを参考に、まずはお手頃な価格のきれいな色のカーディガンを買ってみました。普段なら選ばないような、少し明るいオレンジ色です。それをいつもの地味な服の上に羽織ってみると、鏡の中の自分がいつもより少しだけ明るく見えました。
陶芸教室にそのカーディガンを着ていった日、美咲さんがすぐに気づいてくれて「わあ、すごく素敵です!やっぱりすごくお似合いになりますね!」と満面の笑顔で褒めてくれました。他の教室の方からも「今日はお顔が明るく見えるわね」と言われ、それが何より嬉しかったです。
それ以来、美咲さんと一緒にお店を見て回ったり、スマホでオンラインショップを教えてもらったりすることも増えました。彼女は私のペースに合わせてくれるので、焦ることなく、楽しみながら新しい服選びに挑戦できています。失敗することもありますが、「あ、これはちょっと違ったかな」と笑い合えるのも楽しい時間です。
年齢を気にしない「好き」を共有する楽しさ
美咲さんとの交流を通じて、私はおしゃれに対する考え方が変わりました。完璧を目指す必要はないし、若い人の真似をする必要もありません。今の自分に似合うものを探し、少しでも気分が上がる服を選ぶこと。それが、日常を豊かにしてくれるのだと気づきました。
そして、おしゃれの話だけでなく、仕事の話、家族の話、趣味の話…年齢が30歳以上も離れているのに、話していると共感できること、学びになることが本当にたくさんあります。美咲さんのまっすぐな視点や、新しいことへの柔軟な姿勢に、私はいつも刺激を受けています。
クローゼットの前でため息をついていた日々は過去のものになりました。今は、どんな服を着て美咲さんに会いに行こうか、どんな色の服に挑戦してみようか、と考えるのが楽しみの一つになっています。
年の差があるからこそ、お互いの知らない世界を見せ合い、新しい発見を共有できる。それは、何物にも代えがたい素敵な時間です。もしあなたも、私のように服選びに悩んだり、新しいことに踏み出すのをためらったりしているのであれば、年の差を気にせず、誰かと「好き」や「楽しい」を共有してみることをおすすめします。きっと、あなたの毎日が少しずつ輝き出すはずです。