「無理しないでね」若い友人の優しい一言に救われて
年齢を重ねると、若い頃には感じなかった体の変化に戸惑うことが増えてまいります。ちょっとした疲れやすさ、急な体の冷え、以前より階段がきつく感じるなど、小さなことかもしれませんが、積み重なると心細く感じることもあるでしょう。
そんな体調の変化について、離れて暮らす子どもや夫に話すのは気が引ける、あるいは心配をかけたくないという気持ちから、つい隠してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。ましてや、年の離れた友人に体の不調を打ち明けるなど、関係性に気を遣って難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、私の場合は、年の離れた友人の優しい気遣いに触れ、年齢差を越えた深い部分での理解と支え合いがあることを実感いたしました。今回は、若い友人が私の体調の変化に気づき、温かい言葉をかけてくれた時の体験をお話しさせていただきます。
共通の趣味が繋いだ縁
私がその友人と知り合ったのは、近所のカルチャーセンターでした。私は手芸の講座に長年通っており、彼女は別の講座を受けていました。休憩時間にたまたまロビーでお会いすることが何度かあり、軽い挨拶から始まり、共通の話題(地域のイベントなど)が見つかって、少しずつ言葉を交わすようになりました。彼女はまだ30代で、私とは親子ほども歳が離れています。最初は、世代が違う方とこんなにお話しするのは久しぶりだと新鮮に感じておりました。
何度か立ち話をするうちに、お互いに本が好きだということが分かり、今度おすすめの本を紹介し合いましょう、という話になりました。それから、講座が終わった後に近くのカフェでお茶をしながら、読んだ本の感想を話し合ったり、日々の出来事を話したりする時間が、私たちにとって大切なものとなっていきました。
体調の変化に気づいてくれた優しいまなざし
そんな交流を続ける中で、私は以前より疲れやすさを感じるようになっていました。カフェでのおしゃべりも、話が盛り上がると時間を忘れてしまうのですが、帰宅するとどっと疲れてしまうことがありました。ある日、いつものようにカフェで話している時に、少し息が切れるのを感じて、つい椅子に深く座り直しました。ほんの一瞬の仕草でしたし、会話は途切れさせなかったので、彼女は気づいていないだろうと思っていたのです。
ところが、彼女は私の顔色をそっと見て、「〇〇さん、少し疲れていませんか?」と優しく声をかけてくれたのです。驚きました。自分では隠せていると思っていたのに、若い彼女は些細な変化も見逃さなかったのです。続けて、「もし疲れていたら、今日は早めに帰りましょうか? せっかく楽しいお話ですが、無理しないでくださいね」と言ってくれました。
その「無理しないでね」という言葉が、私の心にじんわりと染み渡りました。私はついつい、相手に気を遣って大丈夫なふりをしてしまう癖があります。特に年下の友人に対しては、元気な姿を見せなければ、弱いところを見せては迷惑をかけるのではないか、という思い込みがあったかもしれません。でも、彼女はその壁をあっさりと取り払ってくれたのです。
年齢差を越えた理解と感謝
彼女の言葉に甘えて、その日は早めにカフェを出ました。帰り道、私は彼女に正直な気持ちを伝えました。「実は最近、少し疲れやすくて。あなたに心配かけたくないと思って、つい無理してしまったようです。でも、気づいてくれて、優しい言葉をかけてくれて本当にありがとう。嬉しかったです。」と。
すると彼女は、「いえいえ、とんでもないです。〇〇さんとお話しするのは私にとって本当に楽しい時間ですから、長く続けたいと思っています。そのためにも、〇〇さんが無理なく過ごせるのが一番ですからね。もし、ちょっと疲れたなとか、どこか辛いなという時があったら、遠慮なく言ってください。座って休みましょうとか、ゆっくり歩きましょうとか、私にできることは何でもしますから。」と、まっすぐな目を見て言ってくれたのです。
その言葉を聞いた時、私は胸がいっぱいになりました。年の差があるからこそ、私が経験してきたことを彼女が素直に聞いてくれるように、彼女もまた、私が経験していない「今の年齢の体の変化」ということを、私の話から理解しようとしてくれているのだと感じたのです。体力的な違いがあることを認めつつ、それでも一緒に時間を過ごしたい、そのためにどうすればお互いが心地よくいられるかを考えてくれているのだという、深い優しさに触れました。
体調の変化を共有することの安心感
この出来事があってから、私は若い友人に対して、以前よりも自然体でいられるようになりました。体調が少し優れない日には、無理せず正直に伝えることができるようになりましたし、彼女もそれを受け入れて、私のペースに合わせてくれるようになりました。「今日はカフェじゃなくて、お家でゆっくりお話ししましょうか」とか、「近所の公園を少しだけ散歩しましょう」など、無理のない提案をしてくれます。
体の変化は、ともすれば孤独を感じやすいものです。しかし、年の離れた友人が、その変化を頭ごなしに否定したり、過度に心配したりするのではなく、「そういうこともあるんですね」と自然に受け止め、そっと寄り添ってくれること。これは、何ものにも代えがたい安心感と喜びを与えてくれます。
年齢が離れていても、お互いを思いやり、弱い部分も含めて受け入れ合うことで、友情はより深く、より確かなものになっていくのだと実感いたしました。
読者の皆様へ
もしかすると、若い世代との交流に興味はあるけれど、「体力がついていけないかも」「体のことで迷惑をかけてしまったらどうしよう」と、躊躇されている方もいらっしゃるかもしれません。確かに、年齢が違えば体の状態も異なります。しかし、今回お話しした私の体験のように、年の離れた友人であっても、あなたの体調の変化に気づき、寄り添ってくれる優しさを持っている可能性は大いにあります。
大切なのは、無理に若い友人に合わせようとすることではなく、素直な自分自身でいることかもしれません。あなたの体調や気持ちを穏やかに伝えることで、相手もまた、あなたにとって何が心地よいかを考え、寄り添ってくれるはずです。
年齢を気にせず、お互いを思いやることができる年の差の友情は、人生をより豊かに彩ってくれる宝物です。体のことなど、デリケートな話題も共有できるような信頼関係を築くことができれば、それはあなたにとって、かけがえのない心の支えとなるでしょう。一歩踏み出す勇気が、新しい温かい関係へと繋がることを願っております。