「まさか私が」60代でできた20代の友達 共通の趣味が繋いだ絆
60代、ぽっかり空いた時間に感じていたこと
子供たちが独立し、夫も定年を迎えて、ふと自分の時間が増えたことに気づきました。嬉しいような、少し寂しいような、不思議な感覚でした。これまで家族のために使っていた時間を、どう過ごしたら良いのか、正直なところ戸惑いもありました。
友人たちと会う機会はもちろんありますが、何か新しいこと、刺激になるようなことにも挑戦してみたい、という気持ちが芽生えてきました。同時に、若い世代の方々とどう関われば良いのか分からない、話が合うのだろうか、と漠然とした不安も感じていました。新しいコミュニティに一歩踏み出すには、少し勇気が必要でした。
そんな私が、ひょんなことから20代の若い友人と出会い、年齢差を全く感じさせない、温かい友情を育むことができた体験についてお話ししたいと思います。
陶芸教室への小さな一歩がくれた出会い
漠然と「何か手先を使う趣味を見つけたい」と考えていた時、自宅からほど近い場所にある陶芸教室の案内を目にしました。「体験教室」という言葉に惹かれ、思い切って予約を入れたのが始まりでした。
初めて足を踏み入れた教室には、私よりずっと若い方が多く通われていました。最初は少し気後れしましたが、先生も他の生徒さんも皆さん親切で、黙々と土に向き合う時間は心地よく、すぐに教室の雰囲気に馴染むことができました。
その教室で出会ったのが、ユミさん(仮名、20代後半)でした。いつもニコニコしていて、作品に取り組む姿勢は真剣そのもの。初めてお話ししたのは、釉薬を選ぶ際に「これ、どんな色になるんですか?」と私が質問したのがきっかけでした。ユミさんは、私が作った湯呑みを見て「わあ、可愛い形ですね!」と褒めてくださり、釉薬についても丁寧に教えてくれました。その時の、少し恥ずかしそうにはにかんだ笑顔が印象的でした。
年齢差を忘れる瞬間と、お互いから学ぶこと
最初は、やはり年齢差を意識しないと言えば嘘になります。「こんな年寄りと話して、退屈じゃないかしら」「どんな話題なら興味を持ってくれるだろうか」など、色々と考えてしまいました。
しかし、ユミさんはいつも自然体で接してくれました。私が作品作りで苦戦していると、さりげなく「ここ、こうすると形が安定しますよ」とアドバイスをくれたり、私が昔の陶器の話をすると、目を輝かせて聞いてくれたりしました。お互いの作品を褒め合ったり、失敗談を笑い合ったりするうちに、年齢の壁はどんどん小さくなっていくのを感じました。
驚いたのは、ユミさんが最新の流行に詳しいのはもちろんですが、私の知らない昔の映画や本についても興味を持ち、質問してくることでした。逆に私は、ユミさんから若い世代の考え方や、新しい技術(スマートフォンの便利な使い方など)を教えてもらい、毎回新しい発見がありました。
ある時、私が「どうも機械が苦手で…」とSNSの使い方について困っていると、ユミさんはすぐに「大丈夫ですよ!今度、一緒にカフェでゆっくりやりましょうか?」と笑顔で言ってくれたのです。「まさか、こんな若い子に手取り足取り教えてもらうなんて!」と最初は面食らいましたが、彼女の親切心に甘え、おかげで新しいツールを少しずつ使えるようになりました。
共通の「好き」が繋ぐ絆
私たちは陶芸という共通の「好き」を通じて、自然と絆を深めていきました。教室がない日も、「この前作った作品、どうなりました?」「今度、近くで陶器市があるみたいですよ!」と連絡を取り合うようになりました。一緒にカフェでお茶をしたり、他の作家さんの作品展を見に行ったり、陶芸以外の時間も共有するようになりました。
年齢差があるからこそ、お互いの持っていない視点や経験を素直に学び合えるのだと感じています。ユミさんは、私の人生経験からくる話に耳を傾け、「なるほど、そういう考え方もあるんですね」と真剣に受け止めてくれます。私も、ユミさんの柔軟な発想や行動力から、たくさんの刺激をもらっています。
もちろん、価値観や興味の対象が全く違うこともあります。ですが、それを否定するのではなく、「そういうものなんだね」「面白いね」と受け止めることで、会話は途切れることなく弾みます。お互いへの敬意を忘れなければ、年齢差はむしろ関係性を豊かにするスパイスになるのだと学びました。
新しい人間関係への一歩を踏み出してみませんか
「年の差の友達ができるなんて、特別なことでしょう?」と思われるかもしれません。私も以前はそう思っていました。でも、ユミさんと出会い、友情を育む中で気づいたのは、年齢は単なる数字に過ぎないということです。大切なのは、相手を理解しようとする気持ちや、共通の「好き」を見つけること、そして何より、ほんの少しの勇気を持って一歩踏み出してみることなのだと。
新しい趣味の世界に飛び込んでみたり、地域の活動に参加してみたり、ほんの少しだけいつもの行動範囲を広げてみる。そうすることで、思いがけない素敵な出会いが待っているかもしれません。若い世代との交流は、私たちに新しい視点と刺激を与えてくれます。
もし、あなたが「若い世代とどう関われば良いか分からない」「新しい関係に踏み出せない」と感じているなら、私の体験談が少しでも勇気につながれば嬉しく思います。年齢を気にせず、あなたの心を豊かにしてくれる出会いは、きっとすぐそこにあるはずですから。