私の常識、今の非常識？ 年の差友人が笑って受け止めてくれた話
年齢を重ねて気づく、世の中の変化
子供たちが独立し、夫も定年を迎えて家にいる時間が増えました。これまでは日々の忙しさに追われ、あまり意識することもありませんでしたが、ふと立ち止まって周りを見渡すと、世の中は私が若い頃とは大きく変わっていることを実感します。特に、若い世代の考え方や当たり前とされていることが、自分の知っている「常識」と違うと感じることが増えてきました。
新しい人間関係を築きたい、特に若い方とも交流してみたいという気持ちはあっても、「今の自分にはついていけないのではないか」「価値観が違いすぎて話が合わないのではないか」と、どこかで一歩踏み出せないでいました。そんな時、私に年の差の友人ができ、彼女との交流を通して、私が抱いていた「常識」への捉え方が変わったという経験をお話ししたいと思います。
地域活動で見つけた歳の差の友人
私の年の差の友人である亜美さん（仮名）との出会いは、近所の図書館で始まった地域ボランティアでした。私は読み聞かせの補助、亜美さんはイベントの企画補助という役割で、最初はあまり接点もありませんでした。亜美さんはまだ20代後半。私から見れば娘よりも若い世代です。
ボランティア活動が進む中で、休憩時間などに少しずつお話しする機会が増えました。穏やかで笑顔が素敵な亜美さんとは、すぐに打ち解けることができました。活動内容について相談したり、ちょっとした雑談をしたりするうちに、年齢差を気にせず話せるようになったのです。
私の「常識」が通用しない？戸惑った瞬間
亜美さんと個人的にも連絡を取り合うようになり、一緒に近所のお店でランチをすることになりました。その時のことです。お店の予約について話している際、私が「電話で確認しておきましょうか」と言うと、亜美さんが少し不思議そうな顔をして「え、予約サイトからネットでちゃちゃっとできますよ」と言ったのです。
私にとっては、飲食店への予約は電話でするのが当たり前でした。ネット予約もあるのは知っていましたが、電話の方が確実だという「常識」が頭の中にありました。亜美さんの言葉を聞いて、自分の感覚が古いものになっていることを突きつけられたような気がして、少し恥ずかしさと戸惑いを感じました。「ああ、若い人たちにとっては、もうネットが当たり前で、電話はむしろ手間なのかしら」と、置いていかれているような寂しさも覚えました。
「気にしなくて大丈夫ですよ」若い友人の優しい言葉
そんな私の様子を察したのか、亜美さんはすぐに「あ、でも電話の方が話し慣れてるっていう方も多いですもんね！ どちらでも大丈夫ですよ」とフォローしてくれました。そして、スマホで予約サイトを開いて、画面を見せながら「こんな感じで簡単なんですけど、もしよかったら今度一緒にやってみますか？」と提案してくれたのです。
その時、私は自分の「常識」が通用しないことに戸惑っていただけではなく、「知らなかった」ということを知られるのが少し怖いと感じていたのだと気づきました。でも、亜美さんは私の戸惑いを否定せず、笑いながら「今の当たり前」を教えてくれ、そして「どちらでも大丈夫」と私の慣れたやり方も受け入れてくれたのです。
彼女のその優しさと、ジェネレーションギャップを「違い」として面白がってくれるような大らかさに触れて、私の肩の力が抜けるのを感じました。「知らなくても恥ずかしくないんだ」「新しいことを知るのは楽しいことなんだ」と、凝り固まっていた心が少しずつ解きほぐされていくようでした。
年齢差があるからこそ、互いに学べること
この出来事を通して、私は亜美さんから予約サイトの使い方だけでなく、もっと大切なことを学びました。それは、世代によって「常識」は変わること、そして、その違いを恐れるのではなく、互いに知り、認め合うことの大切さです。
若い世代は、私たちが経験してきた社会のあり方や価値観を知りません。私たち年上の世代は、若い世代が当たり前としている新しい技術や考え方を知りません。知らなくて当然なのです。それを恥ずかしいと思う必要も、相手を否定する必要もありません。
亜美さんは、私の「常識」を笑うのではなく、優しく受け止めてくれました。私もまた、彼女の「常識」を「最近の若い子は」と否定するのではなく、素直に「そうなんだ！」と驚き、学ばせてもらう姿勢を持つことが大切だと気づきました。
年の差のある友人との交流は、単に楽しい時間を過ごすだけでなく、このように自分の凝り固まった考え方を見直したり、新しい価値観に触れたりする学びの機会を与えてくれます。戸惑うこともありますが、それを受け止め、一緒に笑い合える関係性ができれば、年齢差は壁ではなく、むしろ豊かな彩りとなるのだと感じています。
新しい人間関係、特に若い世代との交流にためらいを感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私自身の経験から言えるのは、年齢やこれまでの「常識」にとらわれず、目の前の相手に心を開いて接してみることの大切さです。きっと、年齢差を超えた温かい交流が待っていることと思います。