年齢は関係ない 若い友人が教えてくれた『自分らしい』おしゃれの見つけ方
おしゃれから遠ざかっていた私の日常
子供たちが独立し、夫との二人の暮らしが中心になってしばらく経った頃でした。日々の生活は穏やかでしたが、鏡の前に立つたびに少し寂しい気持ちになる自分がいました。クローゼットの中は、昔から着ている無難な色の服ばかり。流行を追う気力もなく、「もうこの歳なのだから、これで十分」と、おしゃれをすることから自然と足が遠ざかっていたのです。
若い頃は、それなりに服を選ぶのも好きだったはずなのに、いつの間にか「年齢相応」という言葉に縛られ、挑戦することや変化を楽しむ気持ちを忘れていました。どこか自信が持てず、外出するのも億劫に感じてしまう日もあったように思います。
カルチャーセンターでの出会いと、何気ない会話
そんな私が、あるカルチャーセンターで写真教室に通い始めたのがきっかけでした。そこで席が隣になったのが、Yさんです。彼女はまだ30代前半。最初は年齢も離れているし、話が合うかしらと少し不安でした。しかし、写真という共通の趣味があったことで、すぐに打ち解けることができました。
Yさんはいつも明るく、好奇心旺盛な方でした。そして何より、自分の「好き」を大切にしているのが伝わってきました。彼女の着ている服は、派手すぎないけれど、どこか洗練されていて、いつも素敵だなと思っていました。
ある日、写真教室の帰り道で少しお話する機会がありました。私が「Yさんはいつもおしゃれで羨ましいわ」と何気なく言ったところ、彼女は「そんなことないですよ。でも、おしゃれって楽しいですよね」と笑顔で答えてくれました。そして、私の服装を見て「〇〇さん(私の名前)は、落ち着いた色がよくお似合いですね。でも、もう少し明るい色もきっと素敵だと思いますよ」と言ってくれたのです。
その一言が、私の心に小さな波紋を広げました。「明るい色…? 私が?」と、少し驚きましたが、同時に、若い彼女の率直な言葉に、なぜか素直に耳を傾けたい自分がいました。
「年齢は関係ないですよ」その言葉に背中を押されて
後日、Yさんから「今度、一緒にデパートに行きませんか? 私、洋服を見るのが好きなんです」と誘っていただきました。最初は少し尻込みしましたが、新しい世界を覗いてみたい気持ちが勝り、思い切って「ぜひ」とお返事しました。
デパートの服売り場は、私にとっては久しぶりでした。Yさんは、私がいつも選ばないような色やデザインの服を手に取り、「これ、〇〇さんの優しい雰囲気に合うと思います」「こんな色も素敵ですよ」と次々と勧めてくれました。試着室で鏡の前に立つたびに、最初は気恥ずかしかったのですが、今まで着たことのない明るい色の服や、少しデザイン性のあるブラウスなどが、意外と自分の顔色を明るく見せてくれることに気づきました。
「年齢を気にしすぎて、自分で可能性を狭めていたのかもしれない」
Yさんは、私が少し迷っていると、「似合うか似合わないかは、着てみないと分からないですよ。それに、おしゃれに『この年齢だからこう』なんて決まりはないんです。自分が着たいものを、心地よいと感じるものを着るのが一番だと思います」と言ってくれました。その言葉は、私が長年自分にかけていた「年齢の呪縛」を解き放つような気がしました。
結局、その日は明るいグリーンのカーディガンと、花柄のスカートを一着ずつ購入しました。家に戻ってから改めて袖を通してみると、鏡に映る自分の姿が、いつもより少し明るく見えたのです。
おしゃれがくれた新しい自分と日々の彩り
あの日のデパート巡り以来、私の日常は少しずつ変わりました。クローゼットに新しい色が増え、朝服を選ぶのが楽しくなりました。お気に入りの服を着ている日は、自然と背筋が伸び、外出も億劫ではなくなりました。友人たちからも「最近、明るい色を着るようになったね」「前よりずっと若々しいわよ」と言われることが増え、それがさらなる自信につながりました。
おしゃれは、単に外見を飾るだけでなく、内面にも影響を与えるのだと実感しています。新しい服を着ることは、新しい自分に出会うこと。年齢を理由に諦めていたおしゃれを再び楽しむことで、心が弾み、日々の生活に彩りが戻ってきました。
これは、年の離れたYさんとの友情がくれた大切な気づきです。年齢や立場を超えて、互いの「好き」を分かち合い、新しい一歩を応援し合える関係性は、何物にも代えがたい宝物だと感じています。
年齢を気にせず、自分らしいおしゃれを楽しんで
もし、かつての私のように「もう歳だから…」とおしゃれに自信が持てなくなっている方がいらっしゃるなら、少しだけ勇気を出してみてください。デパートの明るい色の服に袖を通してみる、今まで選ばなかったデザインに挑戦してみる。小さな一歩が、新しい自分、そして日々の楽しさを見つけるきっかけになるかもしれません。
そして、もし身近に年の離れた友人がいるなら、ぜひおしゃれの話題を共有してみてください。若い世代の柔軟な感性に触れることは、自分の中の固定観念を覆し、新しい発見をもたらしてくれるはずです。年齢は、おしゃれを楽しむことの障壁にはなりません。「自分らしい」おしゃれを、心ゆくまで楽しんでいただきたいと思います。