私が作った梅干し、彼女が焼いたパン 年の差友人と『手作り』を贈り合う喜び
手作りの温かさが繋いだ、世代を超えた友情
子供たちが独立し、夫婦二人の生活にも慣れてきた頃、ぽっかりと心に空いた時間を持て余すようになりました。若い頃からの友人たちは皆、それぞれの家庭や仕事で忙しくしており、気軽に声をかけるのも気が引けるような状況でした。何か新しいことを始めたい、でも一人では億劫だし、どうすれば新しい人との出会いがあるのだろうか。特に、若い世代の方々とどう関われば良いのか分からず、一歩踏み出せないでおりました。
そんな私が、今、年の離れた大切な友人と温かい交流を重ねております。きっかけは、近所の交流センターで参加した、地域のボランティア活動でした。そこで出会ったのが、当時30代の彼女です。最初は年齢が離れていることもあり、きちんとした敬語で話すばかりで、まさかこんなに親しくなれるとは思ってもおりませんでした。
「これ、おばあちゃんの味だ!」手作りの梅干しがきっかけで
彼女との距離が縮まったのは、私が自宅で漬けた梅干しを少しおすそ分けした時のことです。季節の手仕事として毎年梅干しを漬けているのですが、その年は少し多くできたので、お世話になっている方々にお配りしておりました。
「わあ、ありがとうございます!自家製なんてすごいですね」
彼女はそう言って、目を輝かせながら受け取ってくれました。数日後、「早速いただきました。これ、私の亡くなったおばあちゃんの梅干しの味がします!懐かしくて、なんだか涙が出そうになりました」と、丁寧なメッセージを送ってくれたのです。その言葉が、私の心に温かく響きました。単に美味しいというだけでなく、「おばあちゃんの味」という、彼女にとって大切な思い出と結びついたことが、私にとって何よりも嬉しいことだったからです。
手作りパンのお返し、そして深まる心の交流
それからしばらくして、今度は彼女から手作りのパンをいただきました。「いつもお世話になっているお礼です。焼きたてなので、ぜひ温かいうちに召し上がってください」と、まだほんのり温かいパンを紙袋に入れて持ってきてくれたのです。聞けば、彼女は最近パン作りに夢中になっているとのこと。
一口いただくと、外はカリッと、中はふっくらとしていて、素朴ながらも愛情がこもった優しい味がしました。パン作りは手間がかかることを知っておりますので、私のために時間をかけて作ってくれたのだと思うと、胸がいっぱいになりました。
この、梅干しとパンの贈り物をきっかけに、私たちはより気兼ねなく話せるようになりました。手作りの品を介して、お互いの暮らしの一端や、大切にしているものを知ることができたように感じます。彼女は、都会で忙しく働く中で、家庭菜園で育てた野菜や、私が漬けた梅干しのような「手作り」の温かさに触れることが、心の安らぎになっていると話してくれました。一方私は、若い世代の彼女が、限られた時間の中で好きなことに打ち込み、丁寧な暮らしを心がけている姿に感銘を受けました。
手作りの品に込められた「あなたを想う時間」
手作りの品には、作った人の時間と気持ちが込められているものです。お店で買った物ももちろん嬉しいですが、手作りの品を贈ったり贈られたりする際には、「私のために(あなたのことを想って)時間をかけてくれたのだな」という温かい気持ちが伝わってきます。それは、年齢や立場を超えて、お互いを大切に思っているという静かなメッセージのように感じられるのです。
彼女と私は、今でも時々、私が作った季節の preserves(ジャムやシロップ漬け)や、彼女が焼いた新しい種類のパンなどを交換し合っております。それは単なる物の交換ではなく、お互いの「元気でいますか」「あなたのことを思っていますよ」という心のやり取りとなっております。
年齢を気にせず、一歩踏み出す勇気を
私たちのように、年の差があっても、温かい友情を育むことは可能です。最初は戸惑いがあるかもしれませんが、共通の小さな興味や、今回のように「手作り」のような温かいやり取りが、心の扉を開くきっかけになることもございます。
もし今、新しい人間関係、特に若い世代との交流に興味があるものの、どうしたら良いか分からないと感じていらっしゃる方がいましたら、まずは小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。地域の活動に参加してみる、習い事を始めてみる、そしてもし機会があれば、心を込めて作った何かを誰かに贈ってみる。それは、きっと年齢を気にしない、新しい絆を育む素晴らしいきっかけになることでしょう。
手作りの温かさが、きっとあなたの新しい世界を広げてくれるはずです。