定年退職した私とキャリアに悩む若い友人 年の差だから話せた「働く」ということ
定年後の私に訪れた、少しの変化
長年勤めた会社を定年退職してから、しばらくは開放感と同時に、漠然とした寂しさを感じていました。朝起きて「今日は何をしよう」と考える時間が増え、それは喜ばしいことのはずなのに、社会との繋がりが薄れていくような、心にぽっかり穴が開いたような気持ちになることもありました。現役時代は仕事の悩みや目標で頭がいっぱいでしたが、それがなくなった今、自分のこれからについて改めて考える時間が増えました。
そんな時期に、私は地域のボランティア活動に参加するようになりました。そこで出会ったのが、私よりも随分と年下の、活発で笑顔の素敵な女性、Aさんです。最初のうちは、親子ほども違う年齢差に少し戸惑いもありました。話題が見つかるだろうか、話が通じるだろうか、といった不安があったからです。
年齢を超えて通じ合った「働く」という話題
Aさんも同じボランティアグループのメンバーとして、熱心に活動に取り組んでいました。活動を通じて顔を合わせる回数が増え、次第に簡単な挨拶だけでなく、少しずつ言葉を交わすようになりました。驚いたのは、Aさんが私の話すことに真剣に耳を傾けてくれることでした。私の昔話や、定年後の心境についても、「そうなんですね」「それは素晴らしいですね」と相槌を打ちながら聞いてくれたのです。
ある日の活動後、少し時間があったので、二人でお茶をすることになりました。そこで自然な流れから、お互いの「働くこと」について話すことになったのです。私は定年退職した今の気持ちや、現役時代に経験した苦労ややりがいについて話しました。Aさんは、熱心に話を聞いてくれた後、ご自身の仕事の悩みや、これからどんなキャリアを築いていきたいか、といった不安や希望を打ち明けてくれました。
Aさんの話を聞いて、私は大きな気づきを得ました。私たちの生きてきた時代は違いますし、「働く」という言葉が持つ意味合いも、少しずつ変化しているのかもしれません。しかし、仕事に対する真剣な気持ちや、将来に対する不安、そして「もっとこうなりたい」という向上心は、世代を超えて共通するものなのだと感じたのです。
年の差だからこそ見えたお互いの「働く」ということ
私は、自分の現役時代の経験から、「こんな時はこう考えたら楽になるかもしれないよ」「あの時の経験は今に繋がっている」といった話をしました。それは、アドバイスというよりも、自身の失敗談や成功談を語るようなイメージでした。Aさんは、私の話を聞いて、「そんな選択肢もあったんですね」「人生の先輩に聞けて良かったです」と言ってくれました。その言葉を聞いて、私の経験が少しでも若い世代の力になれる可能性があることを知り、とても嬉しく思いました。
一方で、Aさんの「働くこと」に対する価値観や、新しい技術への順応性、柔軟な働き方への考え方を聞いて、私の視野も広がりました。私が「当たり前」だと思っていた働き方やキャリアパスだけが全てではないのだと、改めて感じたのです。定年退職して、「働く」という日々からは一線を引いた私にとって、Aさんと話すことは、社会との繋がりを感じさせてくれる貴重な時間となりました。同時に、自分自身の人生の選択や、歩んできた道のりを振り返り、肯定的に捉え直すきっかけにもなったのです。
年齢を気にしない交流がくれるもの
Aさんと「働くこと」について語り合った時間は、私にとって大きな学びと共感をもたらしてくれました。世代が違えども、人は皆、自分の人生をより良くしようと懸命に生きている。その根幹にある思いは同じなのだと感じました。そして、年の差があるからこそ、お互いに遠慮なく本音で話せる、フラットな関係性が築ける場合もあるのだと知りました。利害関係がないからこそ、純粋に相手の幸せを願う気持ちが生まれるのかもしれません。
新しい人間関係に一歩踏み出すことは、特に年齢を重ねてからは勇気がいるものかもしれません。若い世代との関わりに不安を感じることもあるでしょう。しかし、私のAさんとの出会いや、「働く」ということについて語り合った経験は、年齢を気にしない友情が、どれほど人生を豊かにしてくれるかを教えてくれました。他の人のリアルな体験談を聞くことは、自分自身の新しい一歩を踏み出すためのヒントになるはずです。あなたも、年齢を気にせずに、少しだけ周りを見渡してみてください。きっと、素敵な出会いが待っているはずです。