年の差フレンドのホンネ体験談

定年後に始めた習い事で見つけた 年の差の友情

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新しい一歩を踏み出す勇気

定年退職を迎え、子育ても一段落した頃、それまで仕事や家庭に追われるばかりだった生活に、ぽっかりと時間ができたのを感じました。最初は開放感もありましたが、ふと気づくと、日々の変化が少なくなり、どこか寂しさを覚えるようになりました。友人たちもそれぞれに忙しくしており、昔のように頻繁に会うことも難しくなっていたのです。

何か新しいことを始めたい、でも何をすれば良いのか分からない。そして何より、新しいコミュニティに一人で飛び込んでいくことへの不安がありました。「この歳で新しい友達なんてできるかしら」「若い人たちの中に混ざれるかしら」そんな思いが、私の一歩を重くしていました。

そんな時、たまたま地域の広報誌でカルチャーセンターの講座案内を目にしました。以前から少し興味があった手工芸の講座です。締切も近く、迷っている暇はない、と半ば勢いで申し込んだのが、私の新しい日常への第一歩となりました。

年齢差を感じた最初の教室

講座が始まり、教室に入ると、思った通り、私よりもずっと若い方がたくさんいらっしゃいました。20代らしき方から、30代、40代の方まで。参加者の中でも、私は明らかに年長者でした。

最初のうちは、皆さん黙々と作業をされており、私自身も話しかけるきっかけを見つけられずにいました。「やはり、場違いだったかしら」と少し落ち込んだ日もありました。休憩時間になっても、若い方たちは年齢の近い方同士で楽しそうに話しています。その輪の中に、自分が入っていく勇気が持てずにいたのです。

ただ、講座の内容自体はとても楽しく、集中できる時間でした。無心に手を動かしていると、心が落ち着くのを感じました。続けるうちに、少しずつ周りの方に挨拶を交わすようになり、道具の使い方で困っている若い方に、これまでの経験からくるささやかなアドバイスをすることもありました。

ある若い女性との出会い

そんなある日、隣の席になった20代後半くらいの女性と目が合いました。作品の同じ箇所で少し苦戦していることに気づき、「ここ、ちょっと難しいですよね」と声をかけたのがきっかけです。彼女は「そうなんです!どうしても綺麗にできなくて…」と困った様子でした。

私は自分のやり方を説明し、少し手助けをしました。すると彼女は「ありがとうございます!すごく分かりやすいです!」「〇〇さん(私の下の名前で呼んでくれました)、手先が器用なんですね、羨ましいです!」と、とても明るく言ってくれたのです。その屈託のない笑顔と、年齢を全く気にしない自然な言葉遣いに、私の心はふわっと軽くなるのを感じました。

休憩時間には、その日の講座のこと、使っている道具のことなど、共通の話題で話が弾みました。彼女は、私にとっては何世代も違う若い感覚を持っていましたが、話してみると、興味のあることや、日々のちょっとした悩みなど、意外にも共通する部分があることに気づきました。

習い事を超えた交流へ

講座が進むにつれて、彼女とは自然と親しくなっていきました。教室が終わった後、「お昼、ご一緒しませんか?」と誘ってくれたり、「今度、この作品展があるんですけど、一緒に行きませんか?」と声をかけてくれたり。最初は少し遠慮していましたが、彼女のまっすぐな誘いに、思い切って乗ってみることにしました。

一緒にランチをしたり、作品展に行ったりする中で、教室では話せないプライベートなこと、仕事のこと、家族のことなど、様々な話をするようになりました。彼女は私の人生経験に興味を持ってくれ、私の若い頃の話や、子育ての経験談などを熱心に聞いてくれました。一方、私は彼女から、今時の若い人たちの考え方、働き方、そして私の知らない流行や技術(スマホの便利な使い方なども!)を教えてもらいました。

ジェネレーションギャップを感じることももちろんあります。価値観の違いに驚くこともあります。でも、彼女は私の話を決して否定せず、「そういう時代だったんですね」「そういう考え方もあるんですね、勉強になります」と、いつも肯定的な姿勢で聞いてくれます。私も、彼女の新しい考え方や価値観を面白がって聞くように心がけています。お互いを尊重し、「違う」ことを楽しむ。それが、年の差がある私たちにとって、心地よい関係を築く上で大切なことだと感じています。

年の差の友情がくれたもの

彼女と年の差の友人になれたことで、私の日常は大きく変わりました。新しい情報や刺激を得られるだけでなく、何よりも、年齢や立場を気にせず、ありのままの自分でいられる安心感を得ることができました。若い彼女と話すことで、自分自身の固定観念が覆されたり、新しい興味が生まれたりもしました。

以前は「この歳で」「今更」と思ってためらっていたことにも、挑戦してみようかな、という前向きな気持ちになれたのです。彼女も、私との会話から、今後の人生やキャリアについて考えるヒントを得られたと言ってくれます。お互いに学び合い、支え合える関係です。

新しい習い事を始める時、そしてそこで年の差の方と親しくなる時、少なからず勇気が必要です。でも、その一歩を踏み出した先に待っていたのは、年齢という壁を越えた、かけがえのない友情でした。それは、私の人生を再び彩り豊かなものにしてくれています。

もし今、「何か新しいことを始めたい」「新しい人間関係を築きたいけれど不安がある」と感じていらっしゃる方がいれば、ぜひ、小さな一歩を踏み出してみてください。それは習い事でも、地域のボランティアでも、興味のあるイベントへの参加でも良いと思います。そこで待っているのは、年齢に関係なく、あなたの話に耳を傾け、あなたの存在を喜び、あなたに新しい世界を見せてくれる、素敵な出会いかもしれません。年齢を気にせず、心を開いて人と接してみることで、きっと、新しい友情の扉が開かれるはずです。