「うちの親もそうだった」年の差友人と話して見えた家族の形と世代間の共感
年齢を超えて語り合う「親のこと」
子供たちが独立し、夫婦二人の穏やかな時間が増えた一方で、どこか物足りなさを感じていました。新しい人間関係を築きたい、特に若い世代の方との交流を通して、何か新しい刺激を得たいという気持ちがありました。しかし、どう接して良いか分からず、一歩踏み出せないでいたのです。そんな私が、ひょんなことから年の離れた友人を持つことになり、思いがけない共感や学びを得ています。
今回は、私が若い友人と「家族」、特に「親」について話す中で感じたこと、気づかされたことについてお話ししたいと思います。
ある日、若い友人がこぼした「親との距離」
私の年の離れた友人であるAさん(30代)とは、地域のボランティア活動で知り合いました。最初は丁寧な言葉遣いを心がけつつも、どこかぎこちなさを感じていたのですが、何度か一緒に活動するうちに、年齢を意識せず話せる間柄になっていきました。
ある日の活動終わり、休憩時間に他愛もない話をしている中で、Aさんが少し困ったように「最近、実家の母から連絡が増えて、どう対応すれば良いか悩むことがあるんです」と話してくれました。聞けば、Aさんのご両親は健在で、特に経済的な心配などはないものの、母親からの頻繁な電話や「早く結婚はしないの?」といった問いかけに、どのように返したら良いか迷うことがあるというのです。
「あぁ、うちの親もそうだったな」
その話を聞いた時、私の心の中で「あぁ、わかるわかる」という思いが湧き上がってきました。私が30代だった頃、まだスマートフォンなどない時代ですが、実家の母は何かにつけて連絡をしてきたり、私の将来について心配したりすることがありました。当時は正直、少し煩わしいと感じることもあったように思います。特に、自分の人生は自分で決めたい、という気持ちが強かった頃は、母からの「心配」が「干渉」のように感じてしまうこともありました。
私はAさんに、私自身の若い頃の経験を話してみました。「今思えば、母も初めての子育てで、私のことが心配だったのでしょうね。私自身が親になってみて、ようやく母の気持ちが少し分かった気がするの」と伝えました。そして、「でも、あの頃は、母の言葉に素直に耳を傾けることが難しかったわね」と正直な気持ちも付け加えました。
Aさんは私の話を聞きながら、「そうなんですね…きっと、私の母も私のことを心配してくれているんですよね。でも、どうしてあんなに言ってくるんだろう、と思ってしまって」と、少し安堵したような、でもまだ戸惑っているような表情を浮かべました。
世代を超えた「親」への思い
その会話をきっかけに、私たちは時々、お互いの「親」について話すようになりました。私は自身の親の介護の経験や、親を見送った後の気持ちなどを話しました。Aさんは、ご自身の親との関係性や、将来的なことを考えると漠然とした不安があることなどを話してくれました。
話す中で気づいたのは、時代が変わっても、親と子の関係性における悩みや愛情の形には、共通するものがあるということです。若い世代が親との適度な距離感を探る難しさ、年を重ねた親をどう支えていくかという悩み、そして、親から子への変わらぬ愛情。これらは、私が経験してきたことでもあり、Aさんの世代でも同じように存在しているのだと感じました。
同時に、若い世代ならではの親との関わり方にも気づきがありました。SNSを通じて気軽にコミュニケーションを取る様子や、私たちの世代よりも踏み込んだ個人的な話(自身の悩みなど)を親に打ち明けている様子を聞き、時代の変化を感じました。また、Aさんが「母も時々、私の友人のSNSを見て、私より早く近況を知っていたりするんですよ」と笑って話していた時には、私たちの頃には考えられなかった親子のコミュニケーションの形があるのだと新鮮な驚きを感じました。
年齢差があるからこそ、話せること
年の差のある友人と「親」という非常に個人的なテーマについて話すことは、私にとって貴重な経験でした。同世代の友人とは、親の介護や自身の健康問題など、共通の悩みについて話すことが多いですが、若い友人とは、親との関係性の初期段階での悩みや、これから直面するであろう親の変化について話すことができます。
私の経験は、Aさんにとって少し先の未来の参考になるかもしれませんし、Aさんの話は、私が自身の親との関係を振り返る良い機会を与えてくれます。お互いに、利害関係のない第三者として、客観的に、そして温かく話を聞き合える。これが、年の差のある友情だからこそ可能なことなのだと感じています。
若い友人の親への率直な思いを聞くことで、私自身の親への感謝の気持ちが改めて深まったり、親の立場から見た子供への思いを再認識したりすることもあります。それは、自分一人で考えているだけでは得られない、多角的な視点と気づきを与えてくれるのです。
まとめ:年齢を気にせず、心を開いて話すことから始まる
年の差のある友人との交流は、最初は少し戸惑うことがあるかもしれません。特に、個人的な深い話をするのは勇気がいることです。しかし、今回ご紹介したような「家族」という普遍的なテーマは、意外にも世代を超えて共感し合えるものです。
若い世代の方も、私たち年上の世代も、親との関係に悩み、喜び、そして感謝しています。そうした共通の土台があることを知るだけで、相手への理解が深まり、心の距離が縮まるように感じます。
もし、あなたが若い世代の方との交流に興味があるけれど、話題が見つからない、どう話せば良いか分からないと感じているなら、まずは自分のこと、そして身近な「家族」について、少しだけ心を開いて話してみてはいかがでしょうか。あなたの話は、きっと若い世代の友人にとって、大切な学びや気づきをもたらすでしょう。そして、若い友人の話は、あなたの心に温かい共感と新しい視点を与えてくれるはずです。年齢を気にせず、ありのままの自分で語り合える年の差の友情は、私たちの人生をより豊かにしてくれるのだと、日々感じています。