年の差フレンドのホンネ体験談

「え、そう思うの?」年の差友人の価値観に触れて広がった私の視野

Tags: 年の差友情, 価値観, 世代間交流, 人間関係, 多様性, コミュニケーション

年の差の友人が教えてくれた、価値観という名の新しい風景

年齢を重ねるにつれて、自分の考え方や価値観は固まってくるものだと感じていました。長年の経験から培われた信念のようなものが、自分自身を形作っているのだと思っていたのです。しかし、ひょんなことから年齢が大きく離れた友人との交流が始まり、私のその「固まった価値観」が、まるで新しい風に触れたかのように揺さぶられる体験をいたしました。

始まりは小さな習い事教室

私が年の差の友人、仮にアキさんとしましょう、と出会ったのは、自宅近くの小さな習い事教室でした。私は昔から興味があった分野を学びたくて門を叩き、アキさんは仕事に役立てたいと通い始めたそうです。初めて会った時、アキさんはハキハキとしていて、自分の意見をしっかりと持っている方だなという印象を受けました。年齢は私の子供よりもずっと若い、20代後半とお聞きしました。

最初は、教室での課題について話す程度の関係でした。しかし、何度か顔を合わせるうちに、休憩時間にお茶を飲んだり、少し立ち話をするようになったのです。話題は自然と、教室のことだけでなく、日々の生活や仕事、趣味などに広がっていきました。そこで私は、アキさんの話を聞きながら、「え、そういう風に考えるの?」と驚くことが何度かありました。

戸惑った「働くこと」への価値観の違い

特に印象的だったのは、「働くこと」に対する価値観の違いです。私たちが若い頃は、「会社に入ったら定年まで勤め上げるのが当たり前」「仕事のためにプライベートを犠牲にすることも仕方ない」といった考え方が一般的でした。もちろん個人差はありますが、少なくとも私の周囲ではそうでしたし、私自身もそう信じて生きてきました。

一方、アキさんは「ワークライフバランス」を非常に重視しているようでした。「休みの日まで仕事の連絡が入るのはちょっと」「自分の時間を大切にしたい」といった言葉を聞くたびに、最初は正直、「今の若い人は少し甘いのかな」と思ってしまったのです。私自身が、朝から晩まで、時には休日も仕事に追われる時期を経験してきたからかもしれません。

ある時、仕事で少しつらい状況にあるアキさんの話を聞いていました。私は自分の経験から、「とにかく今は我慢して、歯を食いしばって頑張るしかないよ」と励ましのつもりで言ったのです。するとアキさんは、「もちろん頑張りますけど、心と体を壊してまで続ける必要はないと思っています。どうしてもだめなら、辞めることも選択肢の一つです」と、明るい調子で答えたのです。

その言葉を聞いた時、私は一瞬返す言葉が見つかりませんでした。私の世代では、「辞める」というのは本当にどうしようもなくなった時の、最後の最後の手段、という感覚が強かったからです。アキさんの考え方は、私にとって新鮮であると同時に、少し居心地の悪いものでした。

違いを「否定しない」という気づき

最初は戸惑った私ですが、アキさんの話をもっと聞くうちに、彼女が単に楽をしたいわけではないのだと理解できるようになりました。彼女は彼女なりに、仕事で成果を出すために努力していますし、将来のこともしっかり考えています。ただ、働くことを「自分らしい人生を送るための一つの手段」として捉えている。仕事が人生の全てではない、という考え方なのです。

私の世代が当たり前だと思ってきた働き方が、今の若い世代にとっては必ずしも幸せな形ではないのかもしれない。心や体を壊してまで働き続けることが、果たして本当に正しいことなのだろうか。アキさんの価値観に触れたことで、私の中の「働くこと=耐え忍ぶこと」といった凝り固まったイメージが、少しずつ変化していきました。

私はアキさんの考え方を完全に理解できたわけではありません。きっと私たちには、それぞれの時代背景や経験に基づく、埋められない違いがあるでしょう。しかし、大切なのは、その違いを否定したり、「どちらが正しいか」を決めつけたりしないことなのだと気づきました。

アキさんの考え方を「そういう考え方もあるのね」と受け止め、なぜ彼女がそう考えるのか、その背景にあるものを想像しようと努めること。私の経験を話す時も、「昔はこうだったのよ」と押し付けるのではなく、「私はこう感じてきたのだけれど、今は違うのね」と、お互いの違いを前提に話すこと。そうすることで、私たちの間には、心地よい距離感が生まれました。

価値観の違いは、世界を広げるチャンス

年の差のある友人との交流は、単に楽しい時間を過ごすだけでなく、自分の中の当たり前を問い直し、新しい視点を得る貴重な機会を与えてくれます。アキさんとの出会いは、私にとって、働くことだけでなく、子育てやお金の使い方、将来への考え方など、様々なことについて「そういう考えもあるのね」と視野を広げるきっかけとなりました。

もちろん、価値観の違いからくる小さな衝突や、分かり合えないと感じる瞬間もあるかもしれません。しかし、それは年齢差があるからこそ起こりうることであり、それを乗り越えようとすること自体が、お互いの関係をより深く、豊かなものにしていくのだと思います。

もしあなたが、若い世代との関わり方に戸惑いを感じていたり、自分とは違う価値観に触れることを少し恐れていたりするなら、どうか心配しないでください。年齢差のある友情は、必ずしもすべての価値観が一致している必要はありません。お互いの違いを認め、尊重し合うことから、きっと新しい関係性が生まれるはずです。そしてその関係性は、あなたの世界を、想像以上に豊かに広げてくれることでしょう。