「そういう考えもあるのね」年の差友人との会話から広がる私の世界
年齢を重ねて見つけた、新しい関係性の形
子供たちが巣立ち、夫も定年を迎えて、私は自身の人生と向き合う時間が増えました。これまでは家族のために過ごすことが中心でしたが、ふと立ち止まってみると、友人との付き合いも、長年変わらない顔ぶれとの心地よい関係に落ち着いていることに気づきました。もちろん、それはそれで大切な時間です。しかし心のどこかで、新しい風というか、これまでの自分の「当たり前」とは少し違う世界を見てみたいという気持ちが芽生えていました。
特に若い世代の方々との交流には興味がありましたが、どう話しかけて良いのか分からない、話題が合うだろうかといった不安もあり、なかなか一歩を踏み出せずにいました。そんな時に、私の世界を大きく広げてくれたのが、年齢差のある友人たちとの出会いでした。今回は、少し年の離れた友人との交流を通じて、価値観の違いを受け入れ、そこから多くの学びを得た経験についてお話ししたいと思います。
思いがけない出会いと、最初はぎこちなかった交流
私が現在、最も年齢差のある友人として親しくしているのは、町内のボランティア活動で知り合ったAさんです。彼女はまだ40代前半。私よりも20歳以上も年下になります。ボランティアの作業中、自然と会話する機会が増えましたが、当初はお互いにどこか遠慮がありました。言葉遣いはもちろん、共通の話題を見つけるのも少し大変だったように感じます。
趣味の話をしてみても、私が若い頃に夢中になったものとは全く違う流行りの話題が出てきたり、仕事や子育てに関する話を聞いてみても、私の時代の常識とは随分変わっていることに驚かされました。たとえば、仕事に対する価値観。私の世代は「会社のために尽くす」という考えが一般的でしたが、Aさんは「自分の時間を大切にする」「やりがいを重視する」といった視点を強く持っていて、それが私には新鮮で、時に少し戸惑いも覚えるものでした。
「私の常識」が揺らいだ、ある日の会話
ある時、地域のお祭りについて準備を進めていた時のことです。私が「昔からこう決まっているから」という理由で進めようとしたことに対し、Aさんは「もっとこうすれば、若い人も興味を持つかもしれませんね」「時代に合わせて変えていくことも大切だと思います」と、別の視点からの意見を出してくれました。
正直なところ、最初は「何を言っているのだろう」「面倒なことになるのでは」と感じてしまいました。長年続けてきたやり方を変えることへの抵抗感や、自分の経験に基づいた「これが正しい」という確信があったからです。しかし、Aさんは私の意見を頭ごなしに否定するわけではなく、なぜそう考えるのか、具体的な理由やデータ(若い世代の参加者の声など)を示しながら、丁寧に説明してくれたのです。
その時、私はふと思いました。「そうか、私にとっての『当たり前』は、この世代の方にとってはそうではないのだな」と。そして、「そういう考えもあるのね」と素直にAさんの意見に耳を傾けてみたのです。
価値観の違いを受け入れた先にあったもの
Aさんの提案を皆で話し合い、一部を取り入れてみることにしました。すると驚いたことに、これまであまり参加してくれなかった若い世代の方が興味を示してくれたり、活動自体がより活発になったりといった変化が見られたのです。
この経験は、私にとって大きな学びとなりました。自分の凝り固まった考え方や「常識」がいかに狭い世界に留まっていたか、そして、他者の、特に自分とは違う世代の意見に耳を傾けることの重要性を痛感したのです。
それ以来、Aさんとの会話が以前よりずっと楽しくなりました。仕事のこと、家庭のこと、友人関係、社会のニュースなど、様々な話題について話しますが、意見が違っても構わないと思えるようになったからです。「Aさんはそう考えるのね、面白いわね」と、違いを否定するのではなく、一つの発見として捉えられるようになりました。
彼女の視点から聞く話は、私がこれまで知らなかった世界を見せてくれます。インターネットやSNSの活用法、新しい働き方、ジェンダーに対する考え方など、学ぶことは尽きません。そして、私も自分の人生経験や昔の社会の様子などを話すと、Aさんも興味を持って聞いてくれ、「そんな時代だったんですね」「今の私たちには考えられない苦労があったのですね」と言ってくれます。お互いの「当たり前」が違うからこそ、新鮮な驚きや学びがあり、会話が弾むのです。
年齢を気にしない友情が教えてくれること
年齢差のある友人との交流は、単に楽しいだけでなく、私の人生観や価値観にも良い影響を与えてくれています。自分自身の固定観念に気づかされ、物事を多角的に見る力が養われたように感じます。また、年齢を理由に新しいことを諦める必要はない、いくつになっても学びや成長があるのだということを、彼女たちとの交流が教えてくれます。
もちろん、世代間のギャップを感じる瞬間はありますし、理解に少し時間がかかることもあります。しかし、それは乗り越えられない壁ではなく、むしろお互いをより深く理解するためのステップだと今は思えます。
もし今、「若い世代との交流に興味はあるけれど、どうしたら良いか分からない」「年齢を気にして新しい関係に踏み出せない」と感じている方がいらっしゃるなら、どうか臆病にならないでください。ほんの少しの勇気を出して、関心のある活動に参加してみたり、話しかけてみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
年の差のある友情は、きっとあなたの世界を広げ、人生をより豊かにしてくれるはずです。「そういう考えもあるのね」という穏やかな好奇心を持って、多様な価値観に触れてみてください。年齢を気にしない、心と心で繋がる素晴らしい出会いが、あなたを待っているかもしれません。