年の差友人と話して変わった私の「若い人」に対する見方
新しい人間関係への戸惑い、そして
年齢を重ね、子供たちが独立して時間に余裕ができると、ふと新しい人間関係を求めたくなることがあります。これまで家庭や仕事を中心に生きてきた中で、自分の世界をもっと広げたい、新しい刺激が欲しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、新しい人間関係、特に若い世代の方々との交流には、どう関わって良いのか分からない、話が合うのだろうかといった戸惑いや不安を感じることも少なくないかもしれません。私自身、「最近の若い人は〇〇だ」「自分たちとは違う世代だから、価値観が合わないだろう」といった、漠然としたイメージや固定観念をどこかで持っていたように思います。新しいコミュニティへの参加に一歩踏み出せない理由の一つに、そのような「先入観」があったのかもしれません。
しかし、ひょんなことからできた年の差の友人との交流を通じて、私が抱いていた若い世代に対する見方が良い意味で大きく変わる経験をしました。今回は、その体験についてお話ししたいと思います。
「最近の若い人」という私の固定観念
私より40歳ほど年下の友人、Aさんとの出会いは、地域の図書館でした。私が探していた本の場所が分からず困っていた時、声をかけてくれたのがAさんでした。てきぱきと調べて教えてくれ、その時の丁寧な言葉遣いや親切な態度に、私は少し驚きました。正直なところ、「最近の若い人はあまり他人に関心がない」「言葉遣いが乱れている」といったイメージを持っていたからです。
Aさんと何度か図書館で顔を合わせるうちに、本の話題で少しずつ話をするようになりました。最初はやはり緊張しましたし、「こんな年寄りと話しても面白くないだろう」と思って、当たり障りのない話ばかりしていました。Aさんも、きっと私に対して気を使っているのだろうと感じていました。
しかし、話をするうちに、Aさんが私の若い頃に流行した本や映画について、意外と詳しいことを知りました。興味を持って質問してくれるのです。「なぜ、そんな前の時代のことを知っているの?」と尋ねると、「昔のものが好きなんです。YouTubeで色々見ていたら面白くて」と、嬉しそうに話してくれました。私は、今の若い人は最新の情報ばかりを追いかけていると思い込んでいたので、これは私にとって最初の「あれ?」という気づきでした。
具体的な交流が覆したイメージ
Aさんとの交流が深まるにつれて、私の若い世代に対する固定観念は次々と覆されていきました。
例えば、「若い人は流行に流されやすい」というイメージ。Aさんは確かに流行に敏感な一面もありましたが、同時に自分自身のしっかりとした考えを持っていました。就職活動の悩みを打ち明けてくれたことがありましたが、安易に周囲の意見に流されるのではなく、自分の適性や本当にやりたいことについて深く悩んでいる様子が伝わってきました。その真剣な姿を見て、私はかつての自分や、自分の子供たちが同じように悩んでいた頃を思い出し、胸を打たれました。「ああ、悩むこと、立ち止まること、それは世代に関係なく、一生懸命生きている証なのだな」と感じ入りました。
また、「若い人は上下関係を気にしない」と思っていたこともありました。しかし、Aさんはいつも私に対して敬意を持って接してくれます。もちろん、友人としての親しみやすさもありますが、私が何か経験談を話すと、「へえ、そうなんですね」「勉強になります」と真剣に耳を傾けてくれます。私が体調を崩した時には、「無理しないでくださいね」「何かできることはありますか?」と、自分の親にでも話すかのように自然に心配してくれました。その素直な優しさに触れるたび、私は自分が抱いていた「最近の若い人」という漠然としたイメージが、いかに現実と違うのかを実感しました。
見方が変わると、関係も変わる
Aさんとの交流を通して一番の変化は、私が若い世代に対する見方を変えたことです。単なる「若い人」としてひとくくりにするのではなく、「Aさん」という一人の人間として向き合うようになったのです。年齢や世代で判断するのではなく、その人の個性や考え方、感じ方に目を向けるようになりました。
そうすると、不思議なことに、Aさんとの会話はより一層楽しく、深みのあるものになりました。私からは人生経験で得たささやかな知恵を話すこともあれば、Aさんからは私の知らない今の時代の価値観やテクノロジー、文化について教えてもらうこともあります。お互いに相手の知らない世界を知ることで、自分の世界も広がっていくのを感じます。
かつて私が抱いていた「話が合わないだろう」「分かり合えないだろう」という不安は、いつの間にか消えていました。年齢差は確かにありますが、それを乗り越えるだけの共通の人間的な感情や、互いへの敬意、学びたいという好奇心があることを知ったからです。
年齢を気にせず、心を開いてみる
今回の私の体験談が、もしあなたが新しい人間関係、特に若い世代の方々との交流に一歩踏み出せずにいるとしたら、何かささやかでもヒントになれば嬉しく思います。
私たちが若い世代に対して抱くイメージは、案外、断片的な情報や過去の経験に基づいたもので、実際の彼ら、彼女らとは違うかもしれません。まずは、「最近の若い人」という大きな枠で捉えるのではなく、目の前の「一人の人」として話を聞いてみることから始めてはいかがでしょうか。
年齢を気にしすぎず、お互いを尊重し、知的好奇心を持って接することで、思わぬところで素敵な年の差の友情が芽生える可能性があります。それはきっと、あなたの人生に新しい彩りを与え、日々の暮らしをより豊かなものにしてくれるでしょう。固定観念を手放し、心を開いてみること。それが、年の差を超えた素晴らしい出会いへと繋がる第一歩なのかもしれません。