ボランティア活動で見つけた年の差の友人 若い世代と『一緒に働く』喜び
新しい場所への一歩と、小さな戸惑い
子供たちが独立し、定年を迎えてしばらく経った頃、私の日常はそれまでとは違う静けさに包まれるようになりました。もちろん、家族との時間は大切ですし、自分の趣味に費やす時間も増えました。しかし、どこか心にぽっかりと穴が空いたような、社会とのつながりが薄れていくような感覚があったのも正直な気持ちです。
何か新しいことを始めたい。特に、若い世代の人たちと触れ合う機会がほしい、という漠然とした思いはありました。ただ、どうすれば自然な形で交流できるのか、年の離れた自分を受け入れてもらえるのだろうか、そんな不安が先に立ち、なかなか一歩を踏み出せずにいたのです。読者の皆様の中にも、同じような思いを抱えていらっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。
そんな私が勇気を出して参加してみたのが、地域の清掃活動のボランティアでした。特別なスキルは必要なく、体力に自信がなくても無理のない範囲で参加できるという点に魅力を感じたのです。初めて参加した日は、周りの皆さんに馴染めるだろうか、若い世代の人たちとは何を話せば良いのだろうか、と少し緊張していたことを覚えています。
共通の汗が繋いだ予期せぬ交流
活動が始まってみると、参加者の年齢層は本当に様々でした。学生さんらしき若い方から、私より少し年上の方まで、皆が同じ軍手をはめて、ゴミ拾いに精を出しています。最初は黙々と作業をしていたのですが、休憩時間になると、自然と会話が生まれていきました。
私が声をかけたのは、隣で黙々とゴミを拾っていた20代くらいの女性でした。彼女はテキパキと動き、私のような手際の悪い者にも笑顔で接してくれました。「暑いですね」「この辺りは意外とゴミが多いのですね」そんな他愛もない会話から始まり、参加のきっかけや普段の生活について少しずつ話すようになったのです。
驚いたのは、彼女が私の話にとても興味を持って耳を傾けてくれたことです。私の若い頃の話や、子育ての経験、この地域の昔の様子など、彼女にとっては初めて聞くような話ばかりだったようで、「へえ、そうなんですね」「それは大変でしたね」と、目を輝かせて聞いてくれました。私は、自分の経験が誰かにとって新しい発見になるのだということに、新鮮な喜びを感じました。
年齢差を超えて生まれた『お互い様』の関係
彼女の名前はAさんといいました。それからも何度かボランティア活動で顔を合わせるうちに、自然とLINEを交換するまでに関係は深まりました。活動日以外にも、「今度こんなイベントがあるみたいですよ」「このカフェが素敵でした」など、Aさんの方からメッセージをくれるようになり、年の差を気にせず話せる大切な友人になっていったのです。
Aさんと話していると、私が当たり前だと思っていることが、彼女にとっては全く新しい発見だったり、逆に彼女の当たり前が私には新鮮だったりします。例えば、私がスマートフォンやSNSの使い方で戸惑っていると、Aさんは「大丈夫ですよ、ゆっくりやりましょう」と根気強く教えてくれます。彼女は若い世代の言葉や流行にも詳しく、一緒にいると自分の視野が広がっていくのを感じます。
一方で、Aさんが仕事で悩んでいたり、将来に不安を感じていたりする時には、私のこれまでの経験から話せることを伝えます。具体的な解決策ではなくても、「そういう風に考えたこともありました」「あの頃は大変だったけれど、今思えば必要な時間だった」など、ただ耳を傾け、私の経験談を話すだけでも、Aさんは「少し心が軽くなりました」と言ってくれるのです。
ボランティア活動で一緒に汗を流す中で生まれたこの関係性は、お互いの得意なことや経験を自然と分かち合える、『お互い様』の関係だと感じています。私が体力的に難しい作業をAさんがさっと手伝ってくれたり、私が昔ながらの知恵を教えたり。それぞれの強みを活かし、弱点を補い合う。それは、まさに一緒に『働く』からこそ生まれる、特別な絆なのかもしれません。
年の差が教えてくれた、人生の豊かさ
Aさんとの交流を通じて、私は「年齢を重ねた自分には、もう新しい出会いや世界はないのではないか」という考えが変わりました。新しい場所に一歩踏み出し、年の差を気にせずに心を開いてみることで、こんなにも豊かな人間関係が生まれるのだと知ったのです。
若い世代の人と関わることは、自分自身の凝り固まった考えをほぐし、新しい価値観や情報に触れる貴重な機会になります。そして何より、彼らのひたむきさや前向きな姿勢に触れることは、私たち自身にも新しい『活力』を与えてくれます。
もし、読者の皆様の中に「若い世代との関わり方が分からない」「新しいコミュニティに飛び込むのが怖い」と感じている方がいらっしゃいましたら、私のこの体験談が、少しでも勇気につながれば幸いです。地域のボランティア活動や趣味のサークルなど、まずは小さな一歩から。年齢を気にしない、心温まる年の差の友情は、きっとあなたの日常を彩り豊かにしてくれることでしょう。