一緒に食べるって温かい 年の差友人と囲んだ食卓
子供が独立して、食卓にポッカリと空いた穴
私の子供たちがそれぞれ独立し、家を出ていったのは数年前のことです。それまで賑やかだった食卓が急に静かになり、夫婦二人の食事にもなかなか慣れることができませんでした。特に夕食の時間は、以前の賑わいを思い出し、少し寂しさを感じることもありました。
新しいことに挑戦したり、外に出て人と交流したりしたい気持ちはあったのですが、若い世代の方とどのように関われば良いのか、話題が合うのかといった不安もあり、なかなか一歩を踏み出せずにいたのです。新しいコミュニティに参加しても、馴染めるだろうかという心配もありました。
そんな中、私は地域のボランティア活動に参加するようになりました。そこで出会ったのが、私より30歳近く年下の、〇〇さん(仮名)です。
地域の活動で出会った年の差の友人
〇〇さんは、いつも明るくテキパキと活動に取り組む、本当に気持ちの良い方でした。初めは活動中に軽く挨拶を交わす程度でしたが、作業中に偶然隣り合わせになった時、〇〇さんが私の持っていた古い道具について興味を示してくれたことがきっかけで、少しずつ会話をするようになりました。
驚いたのは、全く世代が違うにも関わらず、話していると時間があっという間に過ぎることでした。私が若い頃の話をすると、目を輝かせて聞いてくれますし、〇〇さんの今の暮らしや考え方を聞くのは、私にとって新鮮でとても興味深いものでした。お互いの常識や感覚が違うことに気づき、笑い合うことも多くありました。
活動が終わった後、少しお茶をすることもありましたが、ある時、思い切って私から「今度、うちに遊びに来ませんか? 簡単なものですが、食事でも一緒にどうかしら」と誘ってみたのです。若い方を自宅に招くのは、考えてみれば初めてのことで、少し緊張しました。
自宅の食卓で深まる絆
〇〇さんは私の誘いを快く受けてくれ、先日、我が家に来てくれることになりました。何を作ろうか、お話は弾むだろうかと、前日から少し落ち着かない気持ちでしたが、それと同時に、誰かが家に来てくれる喜びも感じていました。
当日、〇〇さんは時間通りに笑顔で訪ねてくれました。簡単な家庭料理をいくつか用意し、食卓に並べました。二人でテーブルを囲むのは、家族以外では久しぶりのことです。
食事をしながら、色々な話をしました。ボランティア活動のこと、お互いの趣味のこと、最近あった楽しい出来事や、少し悩んでいることまで。〇〇さんは、私の昔の暮らしの話や、子育ての経験談などを熱心に聞いてくれました。私が話す少し古い言い回しにも、戸惑うことなく耳を傾けてくれたのが嬉しかったです。
一方で、私は〇〇さんが話してくれる、私には馴染みのない流行や考え方について教えてもらい、感心することばかりでした。例えば、彼女が普段利用しているスマートフォンのアプリのこと、友人との連絡の取り方、働き方に対する考え方など、私にとっては全てが新鮮でした。
食事中、〇〇さんが「これ、すごく美味しいです!」と私が作った料理を褒めてくれた時、本当に嬉しかったです。家族に作るのとはまた違う、温かい気持ちになりました。年の差はありますが、美味しいものを「美味しいね」と言い合いながら一緒に食べる時間というのは、特別なものだと感じました。
年齢を気にしない「一緒に食べる」という温かさ
食卓を囲む時間は、私たち二人の距離をぐっと縮めてくれたように感じます。外で会うのとは違い、よりリラックスした雰囲気の中で、普段は話さないような深い話も自然とできました。〇〇さんが、私の話を聞いて「そういう風に考えたことはありませんでした」と言ったり、私が〇〇さんの話を聞いて「へえ、今の若い方はそんな風に考えているのね」と驚いたり。お互いの違いを面白がりながら、尊重し合えることが心地よかったです。
年の差があるからこそ、互いに新鮮な視点を提供し合えるのだと感じています。そして、「一緒に食べる」という日常的な行為が、その関係性をより豊かに、温かいものにしてくれるのだと実感しました。
子供が独立して、少し寂しくなった我が家の食卓に、新しい温かい風が吹き込んできたような、そんな気持ちになりました。
あなたもきっと、温かい食卓を囲めるはず
以前の私は、若い方とどう関われば良いか分からず、少し及び腰になっていました。しかし、〇〇さんとの出会い、そして一緒に食卓を囲んだ経験を通して、年齢は関係なく、心を開いて話してみること、日常のささやかな交流を大切にすることが、素敵な友情を育むのだと学びました。
もし、あなたも私のように、新しい人間関係、特に若い世代との交流に憧れつつも、一歩踏み出せないでいるとしたら。もしかしたら、身近な場所での小さな交流から、温かい関係が始まるかもしれません。そして、いつか年の差の友人と「一緒に食べる」という温かい時間を過ごせる日が来るかもしれません。
年齢を気にせず、心を通わせることは、人生に新しい彩りを与えてくれます。私の体験が、あなたが新しい一歩を踏み出す小さなきっかけになれば幸いです。