若い友人と話して見つけた、自分らしい終活のヒント
「終活」という言葉に感じていた漠然とした不安
私も60代になり、友人との会話で「終活」という言葉を聞く機会が増えてきました。テレビや雑誌でも取り上げられることが多く、漠然とした不安を感じてはいました。しかし、何から手をつけていいのか分からない、ましてや誰に相談していいのかも分からないまま、日々の忙しさに追われて後回しにしていました。「まだ早い」「考えたくない」というのが正直な気持ちだったのかもしれません。
そんな私が、「終活」というデリケートなテーマについて、思いがけず年の差の友人から新しい視点を得ることができた体験をお話ししたいと思います。
地域の集まりでできた年の差の友人
私がその若い友人と出会ったのは、地域のボランティア活動でした。私はそこで高齢者向けの簡単なパソコン操作を教えるお手伝いをしています。彼女は30代で、同じ活動の企画・運営に携わっていました。最初は、私にとっては娘か孫世代のような存在で、話しかけるのも少し遠慮がありました。言葉遣いや価値観が違うだろう、話が合わないだろうと思い込んでいたのです。
ところが、一緒に作業を進めるうちに、彼女の気遣いや仕事への真摯な姿勢に触れ、自然と会話が増えていきました。共通の話題は活動内容だけでなく、お互いの家族のこと、趣味のことなど、多岐にわたるようになりました。年齢差をほとんど感じさせない、フラットで心地よい関係が築かれていったのです。
思いがけず始まった「終活」の話
ある日の活動後、二人でお茶をしていた時のことです。たまたま、共通の知人が高齢者施設に入所したという話になり、そこから自然な流れで「これからのこと」「将来への備え」という話題になりました。私が「最近『終活』ってよく聞くけれど、どうも難しそうで…」と呟くと、彼女が少し驚いたように言いました。
「あ、私の母も最近エンディングノートを書き始めたって言っていました。私も実は少しずつ、身の回りの整理を始めようと思っているんです。」
私は少し意外でした。30代の彼女が、そんなことを考えているなんて。私の頭の中にあった「終活」は、文字通り人生の終わりを見据えた、もっと高齢になってから始めるものだというイメージだったからです。
彼女は続けました。「私にとっての『終活』は、大げさなことではなくて。これから自分がどう生きていきたいか、そのためには何が必要か、何を整理しておきたいか、という今の暮らしをより良くするための準備なんです。例えば、使っていないものを手放したり、思い出の写真データを整理したり。あと、もしもの時に家族が困らないように、パソコンやスマホのパスワードなんかを書き留めておこうかな、とか。まだ先の未来のこと、というよりは、『今』をより良くするための計画、という感覚に近いかもしれません。」
若い友人が見せてくれた多様な「終活」の形
彼女の話を聞いて、私の「終活」に対するイメージは大きく変わりました。暗く重いもの、人生の締めくくり、といったネガティブなものではなく、自分自身のこれからをより豊かに生きるための「準備」であり、自分らしくいるための「選択」でもあるのだと。
彼女は、友人と一緒に「デジタル終活」について学んだこと、自分らしい葬儀の形についてインターネットで調べたこと、実家のお片付けを手伝った経験から感じたことなどを、飾らない言葉で話してくれました。そこには、私の世代が考えるような画一的な「終活」ではなく、個々の価値観やライフスタイルを重視する、多様で柔軟な考え方がありました。
「母はノートに手書きでじっくり書きたいタイプだけど、私はパソコンが得意だからデータで残しておきたい部分もあるかな、とか。正解は一つじゃないんですよね。自分がどうしたいか、家族にどうしてほしいかを考えるのが大切なんだなって。」
彼女の言葉は、私の凝り固まった考えを優しく解きほぐしてくれました。「ちゃんとしなければ」「こうあるべきだ」というプレッσω圧から解放され、「自分らしい終活を考えてみよう」と前向きに思えるようになったのです。
年齢差を超えて分かち合えた学び
この会話を通して、私は年の差の友人から大切な学びを得ました。一つは、「終活」というテーマ一つとっても、世代によってこんなにも多様な視点や考え方があるということ。そして、若い世代の柔軟な発想や情報収集力は、私たちが気づけない新しい可能性を示してくれるということです。
また、年齢を重ねた私たちの経験や知識も、若い世代にとっては何らかのヒントになるのかもしれません。実際、彼女は私の経験談や昔の話を興味深く聞いてくれ、そこから何かを感じ取ってくれているようでした。お互いの世代から学び合い、支え合うことができるのが、年の差友情の素晴らしいところだと改めて感じました。
自分らしい「これから」のために、今できること
若い友人との会話の後、私は漠然とした不安から一歩踏み出し、自分らしい「終活」について考え始めています。まずは、身の回りの不要なものを少しずつ整理したり、大切な書類の場所をまとめることから始めてみました。完璧を目指すのではなく、「今の私ができること」から始める。この小さな一歩が、これからの私の日々をより穏やかで豊かなものにしてくれると信じています。
もしあなたも「終活」という言葉にためらいを感じているのであれば、まずは身近なことから、あるいは年の差のある友人や知人と、気楽に話してみるのも良いかもしれません。きっと、あなたが想像もしなかった新しい発見やヒントが見つかるはずです。年齢を気にせず、自分らしい「これから」のために、今できることから始めてみませんか。